自分のモノサシもってますか?
先日、音楽をやっている高校生がレッスンを受けにきてくれました。
彼曰く「先生の指示に従っていたら身体に違和感が出てきて、、、、そこで、ネットや本を調べてアレクサンダー・テクニークを見つけて受けてみようと思って来たんです。」とのことでした。
今は調べようと思えばいくらでも情報を手に入れられる時代になったので、高校生であっても自分で問題意識を持って動けば必要なものを手に入れやすくなりましたね。
そうはいっても、中高生の方は保護者に連れられてくることが多いので、自分で調べて来てくれたというのにはちょっと感動しました。
さて、レッスンにはサッカーなどのスポーツ、ダンスやヨガ、その他のいろんな習い事をやっていて、指導者から言われた事を一生懸命やろうとしてるんだけど、上手く出来なくて困っている方達も来てくれます。
指導者の方へのアドバイスとしては、「自分が発した言葉を生徒がどう受け取って表現しているのかというところまで注意深く観察しましょう。」ということなのですが、これについては別の機会にお伝えするとして、今日は生徒の側はどういう心構えでいれば、上達しやすいかということを書いていきたいと思います。
まず、言葉を使って動きを伝えるということはとても難しいということを頭に入れておいてください。
例えば、「〇〇を意識して動いてください。」と言われると、
10人いれば10通りの”意識する”方法で動こうとします。
そのうち、動きが良くなる方向に動作を実行できる人は僕の印象だととても少ないです。
指導者の指示を自分の運動経験というフィルターを通し、解釈して実行しようとするので、指導者の意図するようにできる人もいれば出来ない人も出てくるのです。
本来は指導者が受け手のフィルターが一人一人違うことを前提にアドバイスをするべきなのですが、そこまでできる人はそれほど多くはないと思います。
そういう訳なので、「なんで、できないんだ!」などと言われた場合にも、「自分が悪いんだ」と落ち込む必要はありません。
もしかしたら、コミュニケーションに齟齬があるのかもしれないなと思ってこれから挙げるポイントを確認してみてください。
①部分を動かそうとすると全体のバランスが崩れやすい。
みなさん 「膝を意識して」 と言われたらどうなりますか?
多くの人は膝の辺りに意識が集中して、体全体のことが分からなくなると思います。
言葉には限定する働きがあるので、部分を現す言葉を聞くと意識がそこに集中しやすいのですが、そうなると体全体のバランスが崩れやすくなります。
全体のバランスを司る仕事は複雑すぎて意識してコントロールすることはできないので、それは身体に任せましょう。
そのためには、意識を身体の一部分に偏らせないことが大切です。
②その動作の目的は? 形だけになっていないか?
運動を実行するためには、目的やまわりの環境からの情報が必要になります。
目的は、例えばサッカーならゴールをする、ボールを奪うなどですね。
まわりの環境についての情報とは、味方、相手、ピッチの広さ・状態、風向き、気温、観客の有無など、全ての情報を含みます。
この2つの情報を受け取って初めて、身体はその状況に合わせた微調整をしてくれます。
フォームを変えようとか、新しい動作を習得をしようというときには、身体だけに意識が偏りがちです。
周りの情報を含めた状態で練習しましょう。
③動きはよりラクに・スムーズに感じられるか。
指導者からのアドバイスを受けて動いてみた時に、よりラクに、軽く、スムーズに感じられるかどうかというのは一つのものさしになります。
逆に、緊張が増した、頑張り感が増えた、ぎこちなく感じるという場合は上手く行っていない可能性があります。
緊張感が増すように感じる場合、そのまま練習を続けると上手くできてない動作を強化していくことになります。
その動きが身に付いて習慣化してしまうと、後から修正するのはちょっと大変です。
その場合は闇雲に回数を重ねるのではなく、いったん立ち止まって自分がやっていることを見直してみましょう。
④感覚をガイドにしていないか?
運動は 意図する→神経を介して指令が伝達される→ 筋肉が働いて動きが実行される → 感覚がフィードバックされる という順序で起こります。
ですが、良くある上手くいかないやり方は
ラクな・スムーズな感覚を感じながらor 探しながら実行しようとする。:感覚は動いた結果としてやってくるもの、つまり、過去の情報です。それを使って今、動こうとするとぎこちなくなります。
他には、スランプに陥った選手がやりがちなものとしては、
上手くできていた時の感覚を思い出して再現しようとする→ 過去を思い出して再現しようとするので、その瞬間の周りの情報を遮断してしまう → 身体のバランスが崩れる → 同じことを再現できないので、何度もこれを繰り返す → 徐々に下手な動きを習得してしまう。
などです。
感覚は運動を実行した後に、その動作が上手くできたかどうかを判断するモノサシには使えますが、ガイドとして使う事はできません。やりたい動作を意図することから始めましょう。
やりたい動作が明確ではない場合は、その分野のトップレベルの選手の動画を見ることをオススメします。
⑤自分の感覚は当てにならない。
③と矛盾するようですが、ほとんどの人の運動感覚にはズレがあります。例を挙げると、手を真横に挙げてくださいと言われてやってみると、真横ではなく上下にズレが生じる人が多いということなどです。
ですので、自分が感じていることと、実際に行っていることにはズレがある可能性があるということを覚えておいてください。周りの人から見てもらうことも助けになります。
以上、ざっと思いつくことを挙げてみました。
上手くなるためには指導者に言われることを鵜呑みにするのではなく、試してみて、自分の身体と対話し、取捨選択することが大事です。
そのためにも自分のモノサシを育てることは役に立つと思います。
よかったら、チェックしてみてください。