運慶展―仏像に動きが見える時

火曜日の夜を担当している滝波日香理です。
先日、上野の東京国立博物館に運慶展を見に行ってきました。

面白かった~!楽しかった~!
噂には聞いていたのですが、仏像さんたちが、今にも動き出しそうなんですよ。
会場にいた人たちからも口々に「リアル」「まばたきしそう」などの感想が聞かれました。
私たちはもちろん、仏像が動かないことを知っています。
それなのに、なぜそこに「動きだしそうな気配」を感じるのでしょう?
そこに一体何を見ているのでしょう?

そこで思い浮かんだのが、アレクサンダーテクニークのレッスンです。
生徒さんの動きを観察しているときに、
静止していても「いつでも動ける状態だな」と感じたり、
その逆に動いていても「どこかで動きを止めているな」と感じることがあります。

「感じる」と書きましたが、実際は観察・分析しています。
からだ全体が頭の動きとどのように連動しているか、
どちらの方向に向かって動こうとしているか、
どこに力が入っていて、何が動くことを邪魔しているか…など。

つまり、仏像さんたちが「動きだしそう!」と感じるとき、
私は筋肉の質感や関節の連動性、動きの方向性を見ているのかな?
私がしたような分析はしないまでも、
誰もがそういうことを瞬時に認識する目を持っているのだと思います。

今回の展覧会では、仏像さんたちを側面や背後からも見られます。
仕事柄、その立ち方・座り方が気になって側面から眺めてみたのですが、
やはりどれひとつとして、いわゆる「気をつけ」をしていません。
でも姿勢が悪いかと言えば、そんなことは全くなくて、
「正しい立ち方」としてよく図解されるように、
横から見たときに耳・肩・股関節・足首に真っ直ぐな線が引けるような、
安定感のある立ち姿をしています。
背中が長くて、広くて、とてもきれいでした。

あと面白かったのが、邪鬼です。
仁王さんや四天王さんに踏まれて苦しそうにしている、あの鬼たち。
その踏みつぶされ方が、それはもう、実に見事なんですよ。
邪鬼だけを写したポストカードがあったので、嬉しくなって買いました。
写真をごらんください。

邪鬼

どれもこれも、例外なく首根っこを押さえつけられていますね。
脊椎動物は、ここを押さえられると動けなくなります。
F.M.アレクサンダーの発見した原理が、まさにこれです。
加えてもうひとつの要である仙骨のあたりも押さえられていますから、
これはもう、どんなにあがいても身動きできません。
昔の人はそうしたことをよく知っていたのでしょうね。

展覧会の目玉のひとつ、国宝「八大童子立像」も見事でした。
こちらもポストカードですが、ごらんください。
とりわけ目の表情が見事で、感情や性格までが伝わってくるようです。
彼らをじっと見ているうちに、むくむくと台詞まで浮かんできました。
右の人からアテレコ(?)してください。

童子1

烏倶婆誐童子「うお~、腹へったな~!今日の昼飯どうするよ?」
清浄比丘童子「うぐぐ…私はダイエット中ですから、昼飯はがまんします」
恵喜童子「俺は肉だな! こいつで獲物をブスッとしとめに行くぜ」

童子2

衿羯羅童子「私は畑に植わっているサトイモで充分です」
制多伽童子「ふむ、サトイモか…あれは味噌をつけると素晴らしく美味いのだ」
恵光童子「お前ら昼飯って言うけど、まだ10時だぞ! ほら次の現場行くぞ!」

現場って、どこ…? って感じですね。私にもよくわかりません。ハハハ。
繊細な目の表情に、ついつい想像力をかきたてられてしまいました。

目と後頭下筋はつながっているので、
目が生き生きしているとき、たいてい体は自由に動けます。
そんなところからも、動かないはずの仏像さんに動きを感じるのでしょうね。

運慶展、おススメです!
ぜひ本物を見て感じてください。

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