こちらは体験談の紹介ページです。まずは、最初に寄稿してくださったのが、2年ほどレッスンを続けてくださっている福冨崇史さんです。今ある身体をいかに上手く使っていくかを学ぶアレクサンダー・テクニークは、いろんな方のお役に立てると思います。

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多発性硬化症患者の福冨 崇史(ふくとみ たかし)と申します。
月に2回、アレクサンダーテクニークのレッスンを受けています。
難病患者にどのようにアレクサンダーテクニークが役に立っているのか、みなさんにお伝えしたくてメッセージを送らせていただきました。

多発性硬化症は、自分を守るはずの免疫が、自分の脳や脊髄にある神経のカバーを間違って攻撃して壊してしまう病気です。
神経のカバーが壊れると、まるで漏電した電線のように、脳からの「手足を動かせ」などの電気信号の命令が手足にうまく伝わらなくなります。
その結果、いろいろな体の不具合が出ます。症状は目の調子がおかしくなったり、手足を自由に動かせなくなったり、しびれたり痛みが出たりと、
人によって違います。

私が多発性硬化症の診断を受けたのは3年前です。ものが二重に見えたり、左手がしびれたり、左脚がうまく動かずにきちんと歩けなくなり、
車椅子に乗っていました。ステロイド治療のおかげで杖で歩けるようになりましたが、体のバランスを取るのに苦労していました。
体のバランスを取るために体のあちこちに余計な力が入っていたのか、動くとすぐ疲れていました。

そこで、アレクサンダーテクニークの教師をしている従姉妹から話を聞いて、レッスンを受け始めました。
アレクサンダーテクニークは、体に無意識に負担をかけている自分の悪い癖に気づいて、体の自然なありようを取り戻すことを目指すそうです。
私たち患者は、体の不具合のせいで、つい体に負担をかける姿勢や動きをしがちで、疲れやすくなります。
そんな私たちにアレクサンダーテクニークはぴったりだと思います。

私は、レッスンを受け始めて2年になります。以前は、杖に頼り切った歩き方をしていて、とても疲れていました。
ですが、最近は、杖こそ使っているものの、アレクサンダーテクニークのおかげで以前よりも自然な体運びができるようになりました。

最初の頃はわけもわからずレッスンを受けていて、なんだか楽だけどなぜ楽なのか分からないという不思議な体験をしました。
レッスンを続けていくうちに、いつの間にか自然と以前よりも楽に体を動かしたり、座ったり、横になれるようになりました。

レッスンを受けてすぐに、劇的に体が楽になることはないかもしれません。
ですが、続けていくと自然と体に負担がかかりにくい動きができるようになると思います。

患者向けの少し難しい話をさせて下さい。多発性硬化症で再発した場合は、急性期治療としてステロイドパルス療法を行います。足に症状が出て体のバランスを取ることが難しくなった人は、歩くためのリハビリを行うことになると思います。多発性硬化症のセミナーの講演で聞いた話なのですが、入院して筋力が落ちてしまった時は、いきなり筋力を戻すリハビリをするよりも、まずは崩れてしまった体のバランスをなるべく取り戻すリハビリから行った方が良いそうです。
アレクサンダーテクニークは、まさにそのような多発性硬化症の患者が行うリハビリにぴったりだと思います。少なくとも私にはぴったりでした。

この感想を読んでアレクサンダーテクニークにご興味を持たれた方は、ぜひ一度体験レッスンを受けてみてください。少しだけ体が楽になるかもしれません。

2015年10月8日
多発性硬化症患者 福冨 崇史